ミッシェル・バテュ

インタビュー(2010年)

現在(いま)を大切に生きる

「旅」に豊かなイマジネーションを授かり、そのみずみずしい感動をキャンバスに写し取っていくミッシェル・バテュ画伯。
時間を経ても、いつまでも鮮やかさを保ち、色褪せることの無い印象的な作品の数々には、「いまこの時を大切に」という画伯の生き方そのものが投影されています。
いま目の前にあり、手に触れ、音を聞き、そして肌に感じるもの全てのものを、画伯はいつくしむように自らの感性と同化させ、創作へのインスピレーションに換えていきます。
その作品に触れることによって、同じ感動を追体験していける私たちは何と幸せな存在であることでしょうか。

ミッシェル・バテュ先生、今年も東京で個展を開くことになりましたが、今回のテーマは何ですか?

今回は色々な国を旅行して、帰国後すぐに描いた作品が中心です。 旅から得られた様々な感動が薄れないうちに、キャンバスに表現したものです。
たとえば「ブンタナカ」というタイトルの作品がありますが、これはドミニカ共和国の首都サントドミンゴにある小さな町の風景を描いたものです。 サントドミンゴは海辺の町で、真っ白な砂浜と澄んだ海、ヤシの並木がとても印象的な場所です。その感動が消えてしまわないうちに、制作に取り掛かったんです。
この他20008年にスキーで訪れたフランス国境に近いイタリアの街チェルビニア、同じ年に旅したギリシャ、そして2009年に訪ねた南フランスなど、様々な場所題材にしています。

ミッシェル・バテュ画伯が絵を描かれるときのエネルギーの源になるのは何ですか?

私は絵を描くことが好きで、絵に対する気持ちはずっと変わっていません。 絵を描くことはもはや生活の一部と言っていいほど。 私には家族とのかけがえの無い生活があり、そして絵を描く生活がありますが、それらは完全に一体化しています。 夫と娘が2人、かわいい孫までいる暮らしはとても楽しく幸福なものですが、正直なところ、絵を描くことはそれ以上に楽しいこと。 もし、絵を一ヶ月描いてはいけないと言われたら、即座に死んでしまうでしょうね(笑)。 それくらい私にとって絵を描くことは、空気と同じくらい必要なものなんです。

最近は中東をお訪ねになってきたと聞きましたが・・・。

アブダビで大きな展示会が開催されたんです。 このときはフランス大使館やフランス海軍のトップにも招かれ、その時の様子はテレビでも放送されました。 現地のプリンセスのご自宅にも招待していただいて、大変光栄でした。 展示会には地位の高い方をはじめ大勢の方に来場していただくことが出来たんです。

ご盛会で本当に何よりです。 ところで今日はとても素敵なアクセサリーを身につけておられますね。

ドバイで買ったものなのですが、これは安価なものです。 でも、もうひとつはとても高価。 こうして安いものと高価なものをミックスして身につけるのが好きなんです。

アトリエのあるお住まいはパリにありますね。どのような環境のところなのでしょうか?

アトリエのあるパリのアパートは、11階にサロンとキッチン、そして夫の書斎があり、12階は私のアトリエと私室になっています。
私は何事も自分の思うようにすることが大好きで、このアトリエも長い時間をかけて私の好きなものや色を使って、自分好みの空間を作り上げてきました。 使い勝手の良い机と座り心地の良いソファを置き、普段の生活もここで出来るようにコーディネートしてあります。 壁には描きかけのものや描き終えた作品をかけて、絵の具やニスを乾かしているのですが、これもまたデコレーションのひとつになっているんですよ。 植物や小鳥の置物なども配置して、パリという大都会にいながら、大好きな自然を感じられるようにもしてあります
大きな窓からは、私の作品の重要なモチーフとなる広い空、そしてパリの街が一望でき、ここを訪れる人はみな「まさにパリの空の真下に有るアトリエだ」と言ってくれます。 光にあふれたこのアトリエは、絵を描くのにとても適しているのです。 バルコニーも広々として、テーブルと椅子を置いて、夏にはよく友人達を招いてホームパーティーを開きます。
アトリエとしても、お客様をお迎えするサロンとしても、そして日々の生活にも適したこのアパートは、建築家だった私の父が設計したということもあって、私には特別の思い入れのある住まいです。 私のすべてと言ってもいいかもしれません。ここにいると、まるで水の中を悠々と泳ぐ魚のように、とても居心地欲過ごすことが出来ます。

空が望めるアトリエとは、本当に素敵ですね。

アトリエから望む空は、私のインスピレーションの源でもあります。 刻々と変わる変わるパリの空は、いつまで眺めていても決して飽きることはありません。 どんより曇ったグレーの空も、雨に濡れる空も、そして神の存在を信じたくなるような神秘的な光にあふれる空も、どれも私の大好きなパリの空です。
空から強いメッセージを受けたときや、素晴らしい構図を見つけたとき、私は自分の目に焼き付けると同時に、写真にも収めるようにしているんです。 光景があまりに素晴らし過ぎて自分の脳裏に刻むだけでは収まりきらないときがあるのです。 こんなに素晴らしい場所を私に与えてくれた父には、とても感謝しています。

最近はどのようなことに興味がおありですか

たくさんありすぎて困っているんです(笑) 蚤の市にでかけて掘り出し物をみつけてくることも、ちょっとした楽しみのひとつですね。 最近小さなオブジェを見つけ、とても気に入っています。 日本には何度も来ていますが、こうした場所に行ったことが無いので、ぜひ日本の骨董市を経験したいと思っています。

最後にミッシェル・バテュ画伯の人生のモットーを聞かせてください。

「今を大切に生きる」ということです。いま、この時を大事に、そして明日に希望を持つこと。決して過去を振り返らないということです。