ミッシェル・バテュ
インタビュー(2003年)
アトリエを2つお持ちなんですね。
そうですね。一つはパリのモンパルナスの近くで、パリ市街の素晴らしい景色が望め、大きなテラスと溢れる光に恵まれたアトリエです。今はほとんどこちらのアトリエで作品を描いています。もう一つはヴァシュレス(パリから車で1時間)にあり、週末や夏の間はそこで描いています。
なぜこれらのアトリエをその場所に選んだのですか?
もともとは私の父のものでした。パリのアトリエは60年代に建築家である父が建てたものです。当時、不動産取引にも関わっていた父が、上から2つの階を自分用に残しておいたのです。ヴァシュレスのアトリエは1980年にパリ郊外にゆっくりと落ち着いてすごせる家を探していた時、父が一目惚れをし購入しました。残念ながら同年に父は他界しました。さてこんな大きな屋敷をこれからどうしょうか…と悩みもしましたが、父との思いでの残るこの家を結局アトリエとして残すことにしたのです。大リフォームの成果でいまこのアトリエは明るく、自然にも囲まれたとても美しく、リラックスできる場所です。
幼少期はどのように過ごされましたか?
両親も祖母にもとてもかわいがられ、私は本当に幸せな幼少期を送りました。建築家であった父は、パ・ドゥ・カレー(フランス北部)にも代理店を持っており、終戦後のその当時仕事も豊富にあったため、私は家族とともにフランス北部の田舎で幼い時期を過ごしました。もともと絵を描くことは好きでしたが、子どもの頃はまさか画家が私の自然をモチーフにしたスタイルは、幼い頃の、自然や動物を大切にするという家族の教えや体験からきているのでしょう。
創作意欲を掻き立てられるのはどんな風景ですか?
私の中で最もインスピレーションが湧き起こるものは4つあります。
@様々なことが起こる美しい空。例えば色のコントラスト、変化、青色と桃色、きらめく太陽の遠景、面白い形をした雲。
A歴史を物語る物、建物。歴史的価値ある大建築物、石碑、古くから伝わるその土地の神秘。
B植物。全てが美しく、それぞれが異なった形・色。建物に詩的な美しさを与えてくれます。
C動物。全ての動物が大好きで興味をそそられます。彼らの美しさ、本能、違い、防衛…全てに感心しています。
制作過程において一番時間を費やすのはどの段階ですか?
時間の限り見ること、観察すること、つまり描くために注意深い目とセンスをもつことに費やしていますね。とにかく私は好奇心が旺盛で、幼い頃は毎日発見に明け暮れ、大人になってからは様々な場所を旅し、知らない世界を見つけ出すことに夢中になっています。この好奇心のおかげで、私を掻き立てるものは決して尽きることがないんだと思います。
テクニック面でこだわりがありますか?
こだわっていることは何もありません。サイズにしろ、創作時間にしろ、難しさにしろこだわってないのです。いつも「これが私の最後の作品になるかもしれない」と私の持つ全てのエネルギー、才能、意欲、力を注ぎこみます。まるで最後の生きた証になるかのように。
これまで色々な国に旅をされていますが、どの国が一番印象的でしたか?
間違いなくインドです!特にベレナスやカルカッタが印象的でした。言葉にならないくらい本当に衝撃を受けました。そこから戻ってからは色に対する取り組み方も全く違って、今まで多かったグレー(パリのような色)とは異なる色を使うようになりました。スパイスがきいたインド料理も衝撃的でしたね。
インドといえば以前にガンジー首相にお会いになりましたよね。その時の印象を教えてください。
私はいつも自らの身を危険にさらす人達に共感を覚えます。実際に行動を起こすからこそ著名であるのであって、勇気があると思います。一つの目的に掻き立てられ、熱中するということは素晴らしいことだと思いますし、そういう人生こそがおもしろいのではないでしょうか。
日本にいるファンにメッセージをお願いします。
ファンの方々が毎回私の作品を待ち望んでくださることに、とても感激しています。皆様のために絵を描けることが、私の喜びなのです。毎回個展でお会いできることを大切に思っていますし、いつも多くのファンの方々を目にして本当に驚いています。言語・国境の壁を越えて、画家として皆様のためになれるとは幸運なことです。ありがとうございます。